01.02
〔61〕ウ・オ・レ
1999年頃に三宿のラテール洋菓子店で働いている時の事です。
お店で働いている時の会話の中でのヒントがあったんです。
ミックブレンセンターの鈴木さん(専務)と話していたら、鈴木さんが「プリンは温度を80度を超えない方がいいらしいよ」って言ってたって事を話していたんです。その言葉の出どころが誰なのかは記憶にないのですが。
その時に「そうだわ温度が大切」って改めて思ったんです。今まで何となくでやっていたんだけど、これをきちっとやればいいんだって思ったんです。
プリンを焼くのに一般的には金属のバットに布を敷いてそこにプリンを並べてそれに数センチ程度のお湯を張ってオーブンへ入れる。
その時の温度が何度なのかって事です。
よーく考えると、この場合の温度ってどの温度なのか?
オーブンの庫内の温度もあれば、湯煎の温度もある。それに左右されてプリンの生地の温度があって…。
オーブンの温度と湯煎の温度が合わない場合、湯煎の張ってある所までとそうでない所の硬さが変わったりします。
簡単そうだけど、ちゃんと考えると複雑です。
シンプルに温度を一定にと考えた方法が、「容器の生地のある所まで湯煎のお湯を張る」でした。
容器はガラスの小さなコップのような容器を使いました、その容器はラテールの責任者の中村さんが探してきたものだったらと記憶しています。
バットに布を敷いてカラメルを流したプリン用の器を並べてそこへプリンの生地を流して、プリンの生地の所まで湯煎のお湯を張る。お湯はギリギリの位置まで来るのでそーっとオーブンへ入れる。
湯煎のお湯の中に温度計を入れてその温度を確認しつつオーブンの温度を調整しながら焼くようにしました。
ただ、最初の試作の時はオーブンの庫内の水蒸気が多いのかプリンの表面がシワシワの感じになってしまっていたのですが、それでアイデアが出たのが水蒸気があまり触れないようにプリンの容器の上にそのまま置くように蓋をしてみようってことになったんです。そのアイデアを出したのがその数年後にルタオの製造のシェフをやっていた青森県出身の外山君でした。
水蒸気があまり触れないようにと考えて蓋をしたのですが、適度に圧力もかかって綺麗な表面になって焼き上がっていい感じのプリンができました。
牛乳はジャージー牛乳を使っていて、ガラスの器は小さいけどいいものでした。
ミックの鈴木さんが名前を決めて「オウレ」になりました。
ウオレとは、フランス語で書くと「œuf au lait」そのまま日本語にすると、卵と牛乳です。ちょっとわかりにくそうだけどいい名前だと思いました。
オーブンに入れる時のプリンの生地の温度が何度なのか、それによってオーブンに入る時間はすごく変わります。できる限りいつも同じ条件でできるように揃える必要があります。
また夏と冬でもいろんな条件が変わるので、今がどんな状態なんだろうって事を意識しながらイメージする事が大切だと思っています。
レシピもありますが、プリンを液体から火を通して行くと卵の成分によって固まってきます、それをどのくらいの固さにするのかです。
柔らかいのと固いのでは決定的に違うのは、口当たりです。
口当たりというのは、味の広がり方があって卵などのタンパク質から味を感じるのか、牛乳の乳脂肪から感じるのか?お砂糖の甘さから感じるかが変わります。
温度はほんと大事だなって事です、しかも何処のどの温度なのかです。
こうして「ウオレ」が生まれました。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。